【第95回】遡及請求は2度とできない

お問い合わせの電話がありました。

障害年金の請求をして受給が決まったが、遡及請求(過去の時点の診断書を取得する請求方法)をしたいとの相談内容でした。

初めは、事後重症請求(現在から未来に向けての請求)のみで請求したのかと思いましたが、よく話を聞くと過去の診断書(今から15年以上前)も取得ができたので遡及請求もしたとのこと。

それを聞いてなるほどと思いました。

過去の時点では受給が認められないけど、未来に向けては認めますという年金機構の判断結果だったことが理解できたからです。

そのようにお伝えしたところ、『受給決定はありがたいが経済的な不安が解消されない。過去の時点から受給したいので、その分だけの申請ができないか』とのこと。

それに対しては、「できません」と返答させていただきました。

なぜかというと、今さら過去は変えられません。当時のカルテに記載されている内容から診断書を作ってもらっているはずですので、その内容が猫の目のようにクルクル変わっていては真実性が担保できないからです。

遡及請求はやり直しがきかず、1回しか請求できないと言われる理由はこのためです。

事後重症請求であれば、65歳になるまでは請求ができます。身体の状態は将来に向かって刻一刻と変化(良くなったり悪くなったり)する可能性があるからです。

本来であれば、遡及請求をせずに障害年金を請求できる条件が整った時点で速やかに請求するのが一番良いです。

ただ障害年金の制度とつながらずに、だいぶ年月が経過してから請求したいという相談は数多いです。

可能な限り遡及請求できるようにサポートはするのですが、当時のカルテが廃棄されていたり医療機関が廃院となっていたりして請求を断念するケースが多いのが実情です。

本当に残念な話です。正当な権利をきちんと利用していただくためにも、障害年金の制度があることを広く知っていただきたいと常々感じています。

目次